2012年2月7日火曜日

回転変換の行列の計算で三角関数の加法定理を得る

 

大学への数学Ⅲ&Cの勉強
行列と連立1次方程式

【解説】

(X,Y)座標であらわされるベクトルを、左回りに角度θ回転させて、(X’,Y’)座標であらわされるベクトルにする変換は以下の式になります。

X’=(cosθ)X-(sinθ)Y
Y’=(sinθ)X+(cosθ)Y
この変換は次式のように行列であらわせます。

θ=α+β
の場合、
(1)角度αの回転変換の行列(回転行列)は、行列をベクトルに掛け算してベクトルを得る式であらわされている。
(2)角度βの回転変換の行列(回転行列)も、行列をベクトルに掛け算してベクトルを得る式であらわされている。
(3)そのため、以下の、行列の掛け算の定理が成り立つ。
すなわち、
(A)第1のベクトルに角度αの回転変換をして第2のベクトルを得、
(B)その第2のベクトルに角度βの回転変換を行って第3のベクトルを得る変換は、
(C)1つの行列であらわせる。
その行列は、
角度αの回転行列に角度βの回転行列を行列の掛け算計算で得た行列と等しい。

また、第1のベクトルに角度αの回転変換をして得た第2のベクトルに角度βの回転変換を行って第3のベクトルを得る変換は、θ=α+βの回転変換と同じである。

その回転行列を計算して比較すると、上式のように、三角関数の加法定理が得られます。

(補足)
なお、
(1)角度αの回転行列と角度βの回転行列を掛け合わせた計算計算結果に加法定理を適用すると角度(α+β)の回転行列になるので、
(2)角度αの回転に角度βの回転を重ねると角度(α+β)の回転になる
と説明されることがあるが、
その説明は本末転倒です。

角度αの回転に角度βの回転を重ねると角度(α+β)の回転になるのは自明のことであって、
(1)その自明な事実に、
(2)2つの演算を重ね合わせた演算の行列は行列の掛け算によって導出できる行列の掛け算の定理を適用することで、
(3)加法定理という関係式が導き出されます。

定理とその定理から導出できる結果とは、その関係を逆転させて、結果から大元の定理を導き出すこともできます。
そのため、どの事実が自明で主となる事実であり、どの事実が従属的に分かる関係であるかを的確に判断する数学的センスが大切です。

(蛇足)
ここで、2θの回転行列とその2分の1の回転行列の要素の間には以下の関係があることを覚えておくと便利です。



 

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追加講:三角形の面積と行列式
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