2012年2月22日水曜日

行列式の意味と計算方法



大学への数学Ⅲ&Cの勉強
行列と連立1次方程式

【行列式】
ケイリー・ハミルトンの定理の数学的意味を理解するためには、先ず、「行列式」の意味を知る必要があります。

行列式は、ベクトルが張る図形の面積や体積を計算するものです(前のページで説明)。


「行列式」は、行の数と列の数が同じ正方行列の場合に計算できるものです。
(2行2列の行列の行列式)
2行2列の行列の行列式は、
その行列の要素が構成する2つの縦ベクトルが作る平行四辺形の面積をあらわすという意味を持ちます。

2行2列の行列Ampの行列式は、
エディントンの行列式の計算記号εmpを使って、アインシュタインの縮約記法であらわして、
εmpm1p2
で計算します。
この計算に利用する行列
εmp
は、m≠pの場合の、
ε12=1,
ε21=-1
であり、それ以外の、m=pとなる、
εmpε11ε22
です。
行列式
εmpm1p2
は、ベクトル(A11,A21)とベクトル(A12,A22)との作る平行四辺形の面積をあらわすという意味を持ちます。

行列式を具体的に計算すると、
εmpm1p2=A1122-A2112

です。
 なお、行列式の計算方法は、行と列を入れ替えても変わらない、行と列に関して対称な式になっています。
すなわち、行列式は、以下の式でも計算できます。
εmp1m2p


以下で、行列式がベクトルの作る平行四辺形の面積を計算するものであることを説明します。
 

(一言で言うと、行列式の計算式を見ると、
1列目のベクトルに垂直で長さが同じベクトルと、2列目のベクトルとの内積の計算であることがわかります。
その計算は、1列目のベクトルを底辺として2列目のベクトルを斜辺とする平行四辺形の面積を計算するものです。
これで証明ができてしまいましたが、以下の証明も面白いので読んでください。)

以下のように、座標が回転しても結果が変わらないように面積の計算規則を定める点がポイントです。
 X座標軸を回転させてY座標軸に重ねると、Y座標軸はX座標軸の負の方向を向いて重なる。そのため、X成分にY成分を掛け算した結果を正にした場合、このように座標を回転させても面積が変わらないようにするには、必然的に、Y成分にX成分を掛け算した結果を負にしなければならない。それで、計算規則が、行列式の計算規則に定まってしまうのです。


(3行3列の行列式)
3行3列の行列の行列式は、その行列の要素が構成する3つの縦ベクトルが作る斜方体の体積をあらわすという意味を持ちます。

3行3列の行列Ampの行列式は、
エディントンの行列式の計算記号εmprを使って、アインシュタインの縮約記法であらわして、
εmprm1p2r3
で計算します。
この計算に利用する行列(正しくは、テンソルと呼ばれる)
εmpr
は、m≠p、m≠r、p≠rの場合の、
ε123=ε231=ε312=1
ε213=ε321=ε132=-1
であり、それ以外の
εmpr=0
です。
行列式
εmprm1p2r3
は、ベクトル(A11,A21,A31)とベクトル(A12,A22,A32)とベクトル(A13,A23,A33)との作る斜方体の体積をあらわすという意味を持ちます。

行列式を具体的に計算すると、
εmprm1p2r3
=A112233
+A213213
+A311223
-A211233
-A312213
-A113223

です。
 この行列式が斜方体の体積をあらわすので、3つの3次元ベクトルの先端と原点とを頂点とする三角錐の体積は、その3つの3次元ベクトルを3つの列ベクトルとする行列式の値を6分の1にした値になります。
 このように、行列式は、行列を構成するベクトルが作る面積や体積をあらわします。

(n行n列の行列式)
ε(p1)(p2)(p3)・・・(pn){A(p1)1(p2)2(p3)3・・・A(pn)n
で計算します。
ここで用いた添え字がn個の行列(正式には、添え字2つのものを行列と呼び、添え字3つ以上のものはテンソルと呼ばれる)
ε(p1)(p2)(p3)・・・(pn)は、以下の値を持ちます。
ε(1)(2)(3)・・・(n)=1
この添え字の位置を交換すると(-1)倍になる。例えば、1と2を交換すると、
ε(2)(1)(3)・・・(n)=-1
これらの添え字の位置を交換した要素以外は全て0です。例えば、
ε(1)(1)(3)・・・(n)=0


【行列式は行と列を入れ替えても結果が同じ】
行列式は、計算の元になる行列の行と列に関して対称な計算式です。そのため、行と列を入れ替えた行列でも行列式は同じ値になります。

【行列式が0になる行列の性質】
 行列を列ベクトルに分割したとき、その列ベクトルが独立でなく、1つの列べクトルが他の列ベクトル(重みつき和)であらわせる場合は、行列式が0になります。

 (2行2列の行列の場合)
 例えば、2行2列の行列の場合は、行列式が0になる場合は、行列の2つの列ベクトルが、平行な2つのベクトルの場合です。

 この平行な2つのベクトルで構成する平行四辺形の面積は0です。
行列式はその面積をあらわすものなので、その行列式は0になります。


 (3行3列の行列の場合)
 3行3列の行列の場合は、行列式が0になる場合は、行列を構成する3つのベクトルが、同一平面上にある場合です。

 その3つのベクトルで構成される斜方体は、その平面上の高さが0であるので、体積が0です。
行列式はその体積をあらわすものなので、その行列式は0になります。

行列式は、そのうちの2つの行が同じ行ベクトルであると、行列式が0になります。2つの列が同じ列ベクトルの場合も0になります。

また、行列式が0になる行列は、あるベクトルを0ベクトルに変換する性質があります。後に説明する内容ですが、そのベクトルは、その行列の、値が0の固有値に対する固有ベクトルです。
そして、その固有ベクトルには、次のページで説明する余因子行列の列ベクトルが比例します。

なお、以下の行列式の積の計算は間違えやすい。






リンク:
追加講:三角形の面積と行列式
高校数学の目次

2012年2月19日日曜日

回転した楕円の方程式



大学への数学Ⅲ&Cの勉強
行列と連立1次方程式

以下の説明は少し長くなります。回転した楕円の式を手っ取り早く求める方法を次ページに書きましたので、楕円の式のみに興味のある人は次のページに進んでください。
(ただし、このページの最後の、楕円の軸ベクトルの公式は見て欲しい。)

【解説】
直線を座標原点を中心に回転させる場合は、以下の図のように、回転した直線の方程式が求められます。



直線の式は、直線上の点の位置ベクトルと単位ベクトルaの内積が直線と原点との間の距離cであるという関係をあらわす式ですので、直線を回転すると、その単位ベクトルaが回転します。それで、回転した直線の式は単位ベクトルaを回転変換することで求められます。


次に、楕円を座標原点を中心に回転させる場合を、
以下の図で考える。




楕円の式は、楕円の軸をXY座標軸に合わせるように回転を巻き戻した場合の式はわかっています。そのため、回転した楕円上の点(X,Y)を、回転を巻き戻した楕円上の点(X’,Y’)に変換して、その点のXY座標を楕円の式であらわします。
回転した楕円上の点の座標(X,Y)を(X’,Y’)に変換する、回転の巻き戻し変換の行列をCmkとします。
以下では、この行列による座標の変換の式を楕円の式に代入して、その代入した式を変形することで回転した楕円の式を計算します。






以上の計算結果をまとめると、

こうして、回転した楕円をあらわす方程式が計算できました。
回転した楕円の方程式をあらわすために対称行列Fksを利用しました。

この楕円をあらわす方程式の左辺Xksは、
ベクトルXとべクトル(Fks)との内積を計算する式です。
すなわち、べクトルXを行列Fksで変換して作ったベクトルと元のベクトルとの内積を計算する式です。
元のベクトルXが固有ベクトルのとき、固有ベクトルは固有値倍に拡大されます。
その内積の計算結果は、元のベクトルの長さの2乗を固有値倍した値になります。

結局、楕円は、位置ベクトルXを対称行列Fksで変換して作ったベクトルと元の位置ベクトルとの内積が1になるという関係を満たす点の集合です。

次に、回転した楕円の式が与えられたとき、その楕円はどれくらいの角度回転した楕円であるか、その回転角度を楕円の式から計算する方法を考えます。
その方法は、以下の楕円の軸の性質を利用します。


 なお、この軸ベクトルBは、楕円の(-θの)回転変換の行列の2列目の列ベクトルC-1k2です。


 なお、この軸ベクトルGは、楕円の(-θの)回転変換の行列の1列目の列ベクトルC-1k1です。

以上のように、回転した楕円の軸ベクトルは、対称行列Fksの固有ベクトルです。そのため、対称行列Fksの固有ベクトルを計算すれば回転した楕円の回転角度がわかります。


なお、回転した楕円の軸の長さaとbは、以下のように計算して固有値(1/a)と(1/b)を得ることでわかります。
(F11-λ)(F22-λ)-F12=0
λ-(F11+F22)λ+F1122-F12=0
λ-((1/a)+(1/b))λ+(cosθ+sinθ+2cosθsinθ)(1/(ab))=0
λ-((1/a)+(1/b))λ+(cosθ+sinθ)(1/(ab))=0
λ-((1/a)+(1/b))λ+(1/(ab))=0
(λ-(1/a))(λ-(1/b))=0
∴ 固有値は、(1/a)と(1/b

楕円の方程式は、固有ベクトルの方向では、
ベクトルの長さの2乗×固有値=1 
すなわち、
ベクトルの長さの2乗=1/固有値
よって、そのベクトルの長さはaとbです。

以下で、この固有値λ毎に固有ベクトルを計算します。

固有値λ=(1/a)の場合、
行列Fks-λEksを計算する。
11-(1/a)E11=((-1/a)+(1/b))sinθ
12-(1/a)E12=((-1/a)+(1/b))cosθsinθ
21-(1/a)E21=((-1/a)+(1/b))cosθsinθ
22-(1/a)E22=((-1/a)+(1/b))cosθ
この行列の余因子行列Hmpは、以下の式になる。
11=((-1/a)+(1/b))cosθ
12=-((-1/a)+(1/b))cosθsinθ
21=-((-1/a)+(1/b))cosθsinθ
22=((-1/a)+(1/b))sinθ
この余因子行列の縦ベクトルHm1は固有ベクトルに比例する。
m1=((-1/a)+(1/b))(cosθ, -cosθsinθ)
(注意)表示の都合で、列ベクトルの2成分を1行に記載した。
ここで、((-1/a)+(1/b))cosθ≠0の場合に、
このベクトルを((-1/a)+(1/b))cosθで割り算すると、
(cosθ, -sinθ)
という固有ベクトルが得られる。
あるいは、-((-1/a)+(1/b))sinθ≠0の場合に、
 m2を -((-1/a)+(1/b))sinθで割り算すると、
同じく、
(cosθ, -sinθ)
が固有ベクトルとして得られる。
結局、 ((-1/a)+(1/b))≠0の場合に、
(cosθ, -sinθ)
が固有ベクトルとして得られる。 
この固有ベクトルは、楕円の軸ベクトルGである。

固有値λ=(1/b)の場合、
行列Fksは、a→b,b→a,cosθ→sinθ,sinθ→-cosθという置き換えをしたら同じ式になるので、
固有値(1/a)の固有ベクトルの解を、そのように置き換えることで、固有値(1/b)の固有ベクトルの解になる。
∴ 固有ベクトルは、
(sinθ, cosθ)
これは、楕円の軸ベクトルBである。

(蛇足)
固有ベクトルを求めて楕円の回転角度を求める以外の方法で楕円の回転角度(-θ)を計算する方法として、以下のようにしても角度θを計算できる。
((-1/a)+(1/b)){cosθ-sinθ}≠0の場合に、
2F12/{F22-F11}=2sinθcosθ/{cosθ-sinθ}=tan(2θ)
こうして、回転した楕円の式から、楕円の回転角度の2倍のタンジェントが計算できる。

この、楕円の回転角度2θの公式を導く方法として、固有ベクトルが同じ行列(対称変換行列)を計算することで、この公式を導くこともできる。

【楕円の軸ベクトル(固有ベクトル)の公式】
一方、以上の計算の結果の、対称行列Fの固有ベクトル(角度-θ方向の、楕円の軸の方向のベクトル)をあらわす公式は以下のようにあらわせる。上の蛇足の公式を覚えるよりは、以下の計算手順を含めた公式を覚える方が覚え易いのではないかとも考える。
先ず、固有値は以下の式で計算できる。
 
この固有値毎に以下のように固有ベクトルが計算できる。

 楕円の軸ベクトルの公式は上の蛇足の公式と以下の関係で結び付いています。




リンク:
追加講:三角形の面積と行列式
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2012年2月11日土曜日

追加講 三角形の面積と行列式

 

佐藤の数学教科書「図形と方程式」編の勉強

上図のように頂点の1つが原点Oにあり、他の2頂点が、A(a,a)とB(b,b)である三角形OABの面積を求めると以下の式になる。

△OAB=四角形OMPN-{△OMA+△OBN+△APB}
三角形の頂点Oを任意の座標位置にある頂点C(c,c)であるものとして、上の面積をあらわす公式を、3頂点A,B、Cの座標であらわすと、下の式になる。
この公式は、「クロス積」の形をしています。
「クロス積」は、正式な名前では、「行列式」と呼ばれています。
行列式は、その名前だけを高校3年の数学Cで学びます。
しかし、行列式が持つ以下の性質は、高校数学では教えないことになっているようです。

クロス積(行列式)は、Bの行にAの行の任意数(k)倍を足し算しても、値が変わらない。列も同様です。
(なお、クロス積は、行と列を入れ替えても値が変わりません)


例えば、下のようにBの行にAの行の(-1)倍を加えても、行列式の値は変わりません。 
このクロス積(行列式)は、下の形になります。
(式2)
さらに、一番上の行のみ(-1)を掛け算すれば、値が(-1)倍になります。その行列式全体に(-1)を掛け算したものは最初の行列式と値が同じ以下の形になります。
この行列式は、下図のように、点Aを中心として計算したクロス積(行列式)です。
このように、クロス積(行列式)は、値が同じ他の形のクロス積に容易に変換できるので、
クロス積(行列式)の形になった数式は「きれいな数式」です。
クロス積(行列式)の形の数式は、最も単純な形であらわせた数式と考えて良いです。

上の2つ前の(式2)の行列式に対して、一番上の行に、下の行を加えても、行列式の値は変わらず、以下の式になります。

結局、上の三角形の面積の公式のクロス積(行列式)の部分は、
(1)点Cを中心として計算したクロス積(行列式)
と、
(2)点Aを中心として計算したクロス積(行列式)
と、
(補足)この行列式全体に掛っている(-1)を無くすには、上の行と下の行を入れ替えて(-1)を取り除いた以下の行列式に置き換えてください。
行列式では2つの行を入れ替えれば符号が逆になるからです。(列の入れ替えでも同様)

(3)点Bを中心として計算したクロス式(行列式)
との、
値が同じ3種類のクロス積(行列式)であらわせますが、
そのどれもが、最も単純な式と考えてください。

そのクロス積(行列式)を展開した別の式を求めても、その式は単純では無い式になり、単純な形のクロス積(行列式)の形の表示から退化した形の式に変わってしまいます。




リンク:
三角形の面積をベクトルで分解して計算する
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2012年2月8日水曜日

行列の掛け算の定理

 
 
大学への数学Ⅲ&Cの勉強
行列と連立1次方程式


【解説】
行列の掛け算はどういう演算に応用でき、どういう演算には応用できないかは、行列の掛け算の定理により定められます。
以下で、この行列の掛け算の定理を証明します。


(条件1)ベクトルDが、以下の式1と式2によりベクトルFに変換されること。その式の係数が行列Aを成すこと。

式1と式2の演算の係数を添え字を付けて区別して式3で表します。
この式3は、式3’とあらわすと便利です。
この表し方はアインシュタインが提案した表記方法です(アインシャタインの縮約記法)。
この式3’は、変数で表した添え字の変数名が同じ場合に、その変数名の添え字のあらゆる場合(この場合は1と2のみ)について和をとることにした式です。


(条件2)ベクトルFが、以下の式4と式5によりベクトルGに変換されること。その式の係数が行列Bを成すこと。

式4と式5の演算の係数を添え字を付けて式6で表します。
この式6は、アインシュタインの縮約記法の式6’であらわせます。

式6’に式3’を代入すると式7が得られます。
式7は、更に式8に変形できます(式8はアインシュタインの縮約記法であらわした式です)。
式8’のように、演算Aと演算Bを合成した演算Cを考えます。
式8から、演算Cをあらわす行列Cの要素の値を計算する式9が得られます。
こうして、演算AとBの行列の要素を用いた式9で演算Cをあらわす行列Cの要素が計算できることがわかりました。

この演算Cを、式10のように、演算Aと演算Bの積(掛け算)と定義します。
そして、その演算Aと演算Bの掛け算である演算Cの行列の要素は式9’で計算できます。
これが、行列の掛け算の定理です。


すなわち、行列の掛け算の定理を、以下のようにあらわすことができます。
(条件1)ベクトルを式1~2でベクトルに変換する演算Aの行列Aが定義され、
(条件2)ベクトルを式4~5でベクトルに変換する演算Bの行列Bが定義されている場合に以下のことが成り立つ。
(結果)
第1のベクトルを演算Aで変換して第2のベクトルを得、更に、第2のベクトルを演算Bで変換して第3のベクトルを得る場合、
その2つの演算は、第1のベクトルを第3のベクトルに変換する演算Cにまとめることができる。
演算Cの行列Cは、式9’で計算することで求めることができる。
その演算Cを、演算Aに演算Bを掛け算した演算であると定義する。
演算Cの行列の要素を計算する式9’の計算を、行列の掛け算と定義する。


【計算の形】
なお、この掛け算の計算方式をベクトルAとBの内積にあてはめると、以下の形の行列の計算になる。

この計算は、横ベクトルAと縦ベクトルBの積であらわせる。
一方、アインシュタインの縮約記法では、ベクトルを縦ベクトルと横ベクトルの形に区別しないで内積の計算を表現できる。


 
 


リンク:
追加講:三角形の面積と行列式
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